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【KAKERUインタビュー No.4】
「香り」ビジネスでメキメキ業績を伸ばす株式会社ピクセン・代表取締役の漆畑直樹さん。
商品誕生のキッカケから、これからの夢について語ってもらった。
おもしろいベンチャーの社長、というとIT企業の代名詞のようだが、今回紹介する漆畑さんの興した企業はベンチャーであってもITではない。事業内容を「創香支援サービス」と「代替医療支援サービス」としているピクセン。AERA特集企画ではさまざまな香りビジネス企業を取材した。香りの効果効能は少しずつ知られるようになってきたが、まだまだ商品単体としては小規模だった中で、頭ひとつ抜きん出たといっても過言ではない商品が「香り発生機DAA」だ。健康に役立つ機材として業務用でグングン業績を 伸ばし、来春頃には家庭用機器としても売り出すという。企業環境を大きく変えるこの商品誕生までの話と、お金儲けではなく社会貢献を軸とした企業コンセプトについて代表取締役・漆畑直樹さんにインタビ ューした。
漆畑 直樹(うるしはた・なおき)
1964年生まれ。6人きょうだいの末っ子として静岡県に生まれ、関西で育つ。医学の世界を志し、挫折。
85年電文社取締役、94年ラポール代表取締役を経て、2000年からピクセン代表取締役。
読書が好きで、聖書を読むようにしている。経営者としてだけでなく、発電機やオペラグラスの特許も持つ
発明家の顔も。
 

---香りで病気が発覚する。
姉の癌と死がキッカケだった

香りに注目してビジネスを展開する企業は多いが、社会に対して環境変化を促すような商品は中々創りだせるものではないはずだ。けれど、この企業の代表である漆畑さんは健康に欠かせない「空気」でもって 、やってしまった。

ベンチャーの社長というと金儲けに走っているイメージが強いが、少なくともこの方はお金の力でモノを言わせるような人ではない。言ってみれば「空気の力」でモノを動かすユニークな発想の持ち主なのだ。

起業のキッカケは、2番目のお姉さんを38歳という若さで亡くしたことだった。
「直腸がんでした。末期の頃、もうだいぶ体重も軽くなってしまった姉をダッコしてたら新緑のような香りがしました。あとから、癌特有の匂いがあると思った。もし本当に癌臭があるなら早期に発見できる発見器を作れば、癌で手遅れになって死ぬことは避けられるのではないかと」

それが今の会社を興す原動力になった。香りビジネスを手がける企業は増えている。アロマを取り入れた癒やし効果や、これまでにないメディアの組み合わせで画像と香りを同時に届ける仕掛け、アルコールの中にある香り成分など、さまざまな方面で商品化がされている。

今回AERAで取材した企業の中でも、 ピクセンはライフスタイルに定着させたい(と思わせる)商品を作っている。それが売り上げ増につながっているのだろう。

「アメリカでは、かなり有名な話ですが、ホルモンバランスも空気感染するんですよ」
例えば女性の生理周期は、脇の下から分泌される物質がうつるのだそうだ。だから、男性の中に女性が一 人だけの職場にいると、その日人の生理が狂ってしまうそうだ。空気がいかに重要かを物語る一説だ。

「香らせるだけなら、技術的にはそれほど難しくない。消臭・除菌してから香る仕組み、もっと言えば発ガン性物質を除く空気清浄にこだわったのです」
と語る。癌の早期発見に取り組み、今秋ピンクリボンキャンペーンにも協賛。企業理念に『香りによる社会貢献活動』とある通り、社会の問題や課題に気づき、 全く新しい方法・「香り」による解決を図るために資源を投入し解決をしたいと掲げている。そのマインドがそのまま、香り発生機DAAに投影されているわけだ。

---香り発生機DAAの
仕組みと展開

ピクセンのあるビル3階は香りで満たされている。日によってヒーリング系、スイーツ系、柑橘系とバラ エティに富む。いまやどの企業も分煙化が進んでいるのにオフィスビルといった場所は独特の嫌な香りが 篭っている印象がある。(余談だが「六本木ヒルズのオフィスタワーは何だか臭い」という話で漆畑さんと盛り上がった)ピクセンは扱う商品が「香り」なので、香りの演出は訪問者へのデモンストレーション ともいえる。

空気清浄機は吸引した空気をフィルターに通して浄化するが、香り発生機は天然香料を発散する。発散するだけでなく除菌、消臭もして香る。
「ヒノキ、ヒバなど35種類の間伐材から抽出した天然香料(オイル)を独自の技術で水溶液化。そこに柑橘系など客の好みに合わせて香料を加え、加熱、気化させる。空気中に浮遊している臭気や細菌、ホコ リを気化した水分子が吸着して下に落とす『雨上がりの状態』を作り出すことで、消臭や抗菌が行なわれ る仕組みです。これによって風邪が引きにくくなるというメリットもあります」

機械に使う天然香料は、四角いペットボトルに白い液体が入っている。1日10時間使っても1ヵ月半はもつ。
「メシチリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)や病原性大腸菌O157、インフルエンザA型などのウイルスの活動を抑制する効果も確認しています」

これから乾燥する季節、春先の花粉症対策にも役立ちそうだ。加湿器などよりも欠かせない画期的アイテムなのではないかと私は思う。 飲食店では、ロッテリア高田馬場店など一部のファーストフードや外食産業の店舗でこの香り発生機を取 り入れ始めている。油の臭いを消す効果もあり、店舗の清潔感やイメージに大きく影響を与えている。

ロ ッテリアといっても「ロッテリアプラス」という新しいコンセプトの店舗なので、メニューはちょっとモスバーガーを意識したような手づくり感、内装も椅子がスタバのように座り心地のいい落ち着いた空間だ 。スイーツも販売しているためか、バニラやアップルの香りを効果的にさせている。

「今後は学校給食の現場や老人ホームの調理場などに普及を進めたい。聾唖学校には1000台規模で寄付を考えています。火事を知らせる役目として、香りの火災警報器は近々の商品化を目ざして三年以上研究してきました」
空気環境に敏感な層に、まっさきに届けたい商品だ。

---これからの夢は  
乳がんの発見チップの発明?!

どこか飄々としていて熱弁をふるうわけでなく、気楽に仕事を楽しんでいるような感がある漆畑さん。実際は日々激務に追われているのでしょうが、そういう大変さを滲ませないところはプロの気概があるからなのでしょう。

「僕はすごく恵まれているんです。この会社には各分野のプロフェッショナルが集まっているから、とてもラッキー。もう、乳がんの発見チップができたら、社長を退いてもいいなと思っています」 と爆弾発言?!引退したら、何をしたいのでしょうか?

「朝4時から8時くらいが労働時間の農業もしくは魚市場とかで働きたいですね。だって人間の基本でしょ?日の出に起きて、日暮れには眠る。そういうリズムで生活したいなあ」
きっと、今まさに夢のような暮らしがそういうことなのでしょう。宇宙だ、野球だ、放送局だと騒いでいるベンチャーの社長の野心とは違う、何か人として大切なものを持っているからこそ、ひと味違うビジネスで成功できるのかもしれません。

現在、4歳と2歳のかわいい盛りの女の子のお父さんでもあり、間もなく誕生する小さな命もまた女の子とか。三姉妹のお父さんとしては、
「仕事をしているよりも飛んで家に帰りたい」
と語ります。たとえ社長業であっても、ぜひ早く帰って家族と過ごしてほしいものです。そうした経験をいかして、また新たな 商品を創り生み出し、時代を変えてゆく一石を投じてほしいなと思います。
 
 

商品紹介

<香り発生機DAA>
ほとんど音のしないノイズレス設計で、設置場所を選ばない。 コンピュータ制御で全自動運転。お部屋の芳香の濃度、風量などを正確に コントロール。

 
本体価格は36万7500円、
レンタルは7350円(共に税込み)
詰め替え用の液体香料は1日10時間使用しても、1カ月半は持つ。

サイズ :860×300Φmm (H×W) /重 量 本体:7.4kg/カートリッジ:1.0kg
 
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