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【KAKERUインタビュー No.8】
韓国ドラマ「冬のソナタ」主題歌作曲家のユ・ヘジュンとつくった『チグエソ地球の空の下で』という歌が、4月・5月、NHKの音楽番組「みんなのうた」でオンエアされてから、ネット上では「泣きました」「心が震えた」という感動の書き込みが続いた。作詞を手がけた、もりちよこさんはシンガーソング&コピーライター。かつて私が勤めた会社の大先輩にあたる。「チグエソ」に賭けたもりさんの意気込みをお聞きしました。
もりちよこ(Chiyoko Mori)シンガーソング&コピーライター
コピーライターを経て、作詞家に。キッズソングから熱烈ラブソングまで幅広く書き続けている。代表作は、おかあさんといっしょ「かっぱなにさま?かっぱさま!」「たこやきなんぼマンボ」、ピタゴラスイッチ「んがなくちゃ、いか」、みんなのうた「恋のスベスベマンジュウガニ」、ケロロ軍曹「ケロッ!とマーチ」、天童よしみ「100℃で恋をして」、前川清・梅沢富美男「言えないグッバイ」など。映画「サウンド・オブ・ミュージック」の日本語訳詞も担当。「平成の清少納言」との呼び声も高い。
 
もりさんの熱い想いから生まれた「チグエソ地球の空の下で」
 
私が子どもを産んだ97年は、もりさんが作詞家としてスタートされた年でもありました。ちょうどNHK「おかあさんといっしょ」を子どもと一緒に熱心にみる世代となり、もりさんの作った数々の歌をいつも傍で聴きながら、喜んで口ずさんでいる息子の姿に、不思議なご縁を感じたものです。どちらかといえば、笑って歌えるラテン系の歌が多いようにお見受けしていましたが、一方では演歌やラヴソングなども着々と実力派の歌い手さんに提供し、良質な作品をたくさん発表されてきました。今回誕生した歌「チグエソ地球の空の下で」は、これまでの作品の中でも大きな愛、深い愛を歌い上げています。

そもそも、どうして今回の歌は韓国との合作となったのでしょう。
「2005年の元旦に冬ソナのミニライブがあってね。そこでたまたま冬ソナ主題歌の作曲家、ユ・ヘジュンさん自ら歌を披露されて。その歌声を聴いた瞬間、純粋に声に引きつけられたの。」

ライブ終演後、楽屋へ飛び込み「日本で作詞家をしています。私はどうしてもあなたとバラードが書きたい」と熱い想いを伝えた。それからメールや手紙で何度もやり取りし、楽曲を提示してくれたのは2〜3月頃。中でも一番ピン!ときたのが、今回の「チグエソ」だったという。実は、この曲はあの冬ソナの主題歌候補曲でもあった。

メロディはもちろんやさしさに溢れているバラードだが、詞は心に染み入るような国境を越えて分かり合えるフレーズで、口ずさむうちに心が洗われるような研ぎ澄まされた美しい日本語だ。

「故郷の神戸が大震災に遭った時、私は姪(当時14才)を亡くしました。自然災害が多いこの時期、また殺伐とした世の中だからこそヒューマンラブソングを書きたいと思ったの。男女の恋愛だけでなく、国や動物、植物、地球……、いろいろなものを通じて深い愛を歌いたいと」

『交わす言葉すれ違うばかり/こころ寄せあって生きることは/なぜこんなにもむずかしい』
このサビのフレーズに多くの人が涙した。

自分が提供したメロディにもりさんの詞がつき、訳された詞を読んでユ・ヘジュンさんは雑誌の取材で、
「すばらしい歌になった。この歌のテーマはサランヘヨ=愛なんです。人類愛だけでなく、地球上の生きとし生けるものすべてに感謝して、やさしい心になってもらえたら……」と言っている。

大の韓流ファンでもあるもりさんは、この歌に対する多く人の反応をこう語る。
「近くて遠い国とされる韓国が、冬ソナのブレイクで一気に韓流ファンを増やしたけれど、この歌はそうしたファンだけを惹きつけているのではないんです。むしろ、まったく韓国に縁のなかった50〜60代の男性や、若い女性層から、びっくりするほどたくさんの『感動した!』というコメントがNHKに寄せられているんです。曲や詞だけでなく、ヘジュンさんの歌声。その一語一語にこめられた魂、ちょっと巻き舌の発音。全身全霊で歌う清らかな歌声が、今の日本人にとっては、なぜかノスタルジックな感じがするのかもしれません。」

 

シンガーソング&コピーライターという独自の領域

 

もりさんは高校時代から弾き語りをし、ライブハウス、ポプコンなどでその才能を発揮。東京の大学で学び、関西へ帰郷。25歳くらいまで歌に投じ、26歳で再上京した。生活のためにコピーライターという仕事を選択し、当時、飛ぶ鳥落とす勢いのリクルートへ入社。その後、コピーでも才覚を表し、大手代理店を経て電通EYE(現在は電通東日本に吸収)へ移籍。コピーライターとしても多くのヒット作を生み出しました。

「昔はシンガーソングライター(売れなかったけど)で、その次にコピーライターになりました。そして、作詞家としてスタートするときに、自分に出来ることは何だろう?と考えて、並べてみたら。。。“シンガーソング&コピーライター”だったんです。まんま、ですが……。ただ、ギターやピアノで歌うシンガーの部分は長い間お休みしているので、いつかまた小さなライブハウスで歌わせてもらうのが、夢でもあります。時々、思い出したように「もう歌わないの?」と言って来てくれる人もいるので。(幸せ者でしょ!?) そして、今まで好きでやってきたことを、忘れずに続けていきたいという願いも込めて、“シンガーソング&コピーライター”と名刺に記しています。」

 

3年後の夢は、ハングルで韓国の歌を作詞すること

 

「80年代に日本で英語の歌詞やフレーズが流行ったように、今の時代、韓国語と日本語がミックスされた歌が流行ってもいいと思う。I Love youと英語で歌うよりも、ハングルでサランヘヨと歌ったほうが韓国らしいでしょう?」

「ユ・ヘジュンさんと初めて出会ったとき、いただいた名刺に ハングルで書かれた、たった3文字のお名前さえ読めませんでした。 そして、一緒にチグエソの歌づくりをすることになり、 一生懸命韓国語を学びました。 今では、韓国語の響きは何て美しいんだろう!って思っています。 『チグエソ地球の空の下で』をユ・ヘジュンさんが日本語で歌ってくださったお礼の気持ちも込めて、いつか、ハングルで歌を書くことができれば、と思っています。」

いつでも努力を惜しまず、つむぎだす言葉の一つひとつには、もりさんのお人柄がにじみでています。これからも愛される歌を創り続けてください!

 
 

作品紹介

チグエソ地球の空の下で

作詞:もりちよこ
作曲・歌:ユ・ヘジュン
編曲:馬飼野康二
写真:キム・ギチャン、
   土門拳
アニメーション:
一色あづる
映像:円人(enjin productions)
発売元:ポニーキャニオン
発行:NHKエンタープライズ
¥2,000(税込)

 
 
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