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【KAKERUインタビュー No.26】
昨夏、某雑誌のお仕事でご一緒した寡黙でシャイなイラストレーター兼絵本作家、山本祐司さん。小さな頃からおとなしい男の子には突っ込みいれまくりの裏番長な私でしたが、大きくなってもいまだそれは変わらず(笑)。山本さんは小柄な体にフツフツとパワーの源泉を潜めているのか、ハッキリとそれでいて温かみのある絵をお描きになります。常に慌てず、淡々とゆっくりとマイペースなお仕事ぶりで、食べ物関係の絵もたくさん手がけていらっしゃいます。今冬発売予定の「かるた」のお仕事は、読み札は私、絵札を山本さんにお願いしています。企画進行中のため詳細についてはリリースまで楽しみにお待ちください。今回は、口数の少ない山本さんのことにどれだけお話ししていただき、人物像を知ることができるかをテーマに興味深くインタビューさせていただきました。
山本祐司【Yuji Yamamoto】 イラストレーター・絵本作家
HP「「トコトコネット」http://www31.ocn.ne.jp/~y2u2j2i2/

1966年京都生まれ。大阪デザイナー専門学校卒業、1990年日本グラフィック展入選。1992年セツ・モードセミナー卒業。受賞作多数。雑誌や新聞、広告などのイラストを多数手がける一方、自然や生き物を素朴に描写や、子どもの愛らしい表情を描くのに定評が高い。最新作は「ゆらゆらハンモック」(新風舎)、「ともだちみっけ」(ポプラ社)など。あべみちこと初の合作となる「たべものカルタ」は、ほるぷ出版より12月に発売予定。

家族は、セツモード時代に知り合った夫人、小3の長男、幼稚園年長組の次男。

 
 
山本さんは子どもの頃から、絵を描く仕事をしたかったのですか?何がキッカケとなって、絵本作家・イラストの世界へ?
 

イラストレーターになりたかったんですね。幼稚園、小学校の頃から絵は好きでした。ニワトリの絵をほめられた記憶が今でも強く思い出されます。絵を習っていたわけではありません。僕の家はサザエさんちのようにほんわかしていて、ぬるま湯というか。父は普通のサラリーマンでした。実家のある京都から離れたかった。それで行きたかった大阪に出て絵の学校へ通いました。

 

専門学校へ2回通っていらっしゃいますよね、大阪と東京と。これは何か特別に勉強したいことがあったのですか。

 
僕は高校卒業後、印刷会社へ就職しました。勉強は苦手でしたし、その頃は本当に何も考えずに生きていたんです。それで、仕事は大阪の電算写植の仕事で、来る日も来る日も計算する日々で、とても辛かったですね。一年間お金を貯めるために続けましたが、いろいろ悩んで考えました。職場を辞めた後、軍資金をもって大阪へ行って、昼はバイトして専門学校の夜間コースへ2年間通いました。そこを卒業後、やっぱり東京に行こうと決心して、上京しました。雑貨の問屋でアルバイトしながら、ザ・チョイスイラストレーション(玄光社)に作品を出して入選しましたが、はじめの2年間は友達もいなくて、ものすごく孤独でした。
 
上京後、絵の勉強は独学でされていらしたんですか。
 
絵は描いていましたが、友達がいなかったので、とにかく絵の仲間が欲しくてセツ・モードセミナーへ入学しました。セツにした理由は、自分のバイト代で行けると思ったので。おかげで仲間はたくさん見つかりました。おまけにそこで奥さんとも出会えて、結婚までできました。妻は心の支え、一緒にいてくれるだけで心強い味方です。僕は、自分が幸せにならなければ、幸せな絵は描けないと思っています。
 
結婚することで、幸せになって安定されて……でも、仕事って何でも「その職業になる」ところまでは頑張ればなれると思うんです。でも、それを継続していくエネルギーって半端じゃありませんよね。絵を描くお仕事を続けるには、どんな力が必要ですか。
 
やりたいなと思っていてもできないですよね。心の決心が必要。誰も保障してくれるわけでないし、失敗しても責任をもつ勇気はいるかな。信条にしているのは、マジメに続けていくこと、締切りを守ること。あと、いきてる絵を描くことでしょうか。
 
一人で何かを立ち上げたり、創るというのは孤独のプレッシャーに耐えられないとやっていけませんよね。ところで、どうしてご結婚されたのですか?
 
家庭が作りたかったから。それまで5年間、一人暮らしで寂しかった。セツモード・セミナーは女の人が多かったから、ここで嫁さん見つからなかったら、しょうがないな〜と思っていました(笑)。それで、嫁さんと初めて会った時、親戚のような感じがしたのです。付き合うようになったきっかけはそれですね。嫁さんは「あとさき塾」という絵本作家になるための登竜門の学校へ通っていたことがあって、やはり絵を描きたいようですが今は「描けない」と言います。絵本作家の長新太さんが好きです。自分の子に絵本を読むのも、僕なんかより妻が読んでいます。今、結婚11年目です。A型同士ですが、細かいことを言わないことが夫婦長続きの秘訣でしょうか(笑)。
 
円満な感じが伝わってきますよ。ご自宅兼アトリエでお仕事されていらっしゃって、ご家族とお顔を合わせる時間が長く取れて幸せですよね。
 
朝9時半〜夜7時まで2階で仕事をしています。お昼とおやつの時間は1階に降りて家族と一緒です。でも、ただ2階にあがっただけと思われるのが苦痛だったりします(笑)。外で打ち合わせをして帰宅すると、ものすごく仕事をしてきた感じです。3年前に今の逗子で暮らし始めました。以前は東京の町田市に住んでおりまして、車を飛ばして三浦半島まで遊びに行っていたものです。でも、いざ逗子に住むと海へは月に一度くらいしか行かないですね。子どもは男の子2人。小3と年長になりました。上の子は生意気になってきましたが、走り方とか僕とそっくりです(笑)。
 
山本さんのお描きになる絵は、ご自身とよく似ていらっしゃいます。作品のテーマは何から刺激をうけていますか?また、どんな絵本作家が好きですか?
 
虫とか山、花、自然から刺激を受けているかな。逗子でも山側に暮らしています。季節感があるところに住みたかったので。好きな作家さんは、飯野和義さん、片山健さんですね。イラストレーターでは、和田誠さん、安西水丸さんかな。描きこむよりも、すっきりした絵が好きですね。 
 
水丸さんと線は異なりますが、イメージは似ていますね。シンプルな明るい感じで。では今、一緒に制作している「かるた」と、これからの絵本企画への意気込みを語ってください。
 
かるたは、初めて作品になるものですのでうれしいです、売れてほしいですね。今、絵本は一年に2冊くらい、紙芝居は1〜2本手がけていますが、絵を担当しています。文章も書きたいですが、なかなか難しいですね。
 
色々なツール、例えば息子の国語の教科書なんかでも山本さんの挿し絵をお見かけしたり、たくさんお仕事されていますよね。
 
小学館の季節の図鑑や塗り絵、ベネッセこどもチャレンジの絵、ヤクルトカレンダー、パルシステム、家の光「子どもの目」、学研、教科書……他、気づいたら子ども関係の仕事が8割くらい占めていました。これからもこの方面の仕事を続けていきたいと思います。僕はあまり営業的なことが得意ではありませんが、今はHPが営業代わり。何かありましたらよろしくお願いします。
 
まずは、かるたで頑張りましょう!ありがとうございました。

必要最小限のことしか語らない山本さん。とても人見知りをされるそうです。でも今回は根堀り葉掘り、色んなことを聞いてしまいましたが、誠実に答えてくださいました。うれしかったです。経歴からわかるように、誰かと競争するわけでなく、自分が悩みながら気づいて、ゆっくりと着実に夢を実現されてきた様子がわかります。「自分が幸せでないと、幸せな仕事はできない」という言葉、その通りですね。「結婚=幸せ」は誰にでも当てはまることとは思えませんが(笑)、肝に銘じておこうっと。
 

山本祐司さんの作品
ごく一部をご紹介します

作:神尾万里 絵:山本祐司
(新風舎)

作:那須正幹 絵:山本祐司 (ポプラ社)

文:金子幸司 絵:山本祐司 (農文協)

For Baby & Kids の表紙 首都圏コープ(宅配生協)

家の光 子どもの目
「小学生の詩に僕が絵を描く仕事」

 

中川ひろたか・文 山本祐司・絵 (主婦の友社)

 

作:最上一平 絵:山本祐司 第52回青少年読書感想文全国コンクール課題図書2006年(童心社)

 

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