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【KAKERUインタビュー No.33】
NY de Volunteer. その名の通り、ボランティア活動の啓発と、国際相互理解を推進しているNYで行うNPO団体があります。地道な社会貢献活動が評価され、今年NY市の名誉ある賞を受賞。私は今年、愚息の小学校PTA広報委員会でボランティア活動をしておりますが、良し悪しは別として色々と学ぶことが多い「役」についています。日本でボランティア活動が進まない理由は何なのでしょうか。不況や時代の煽りをうけて、誰もお金にならないことをしなくなったという識者の見方もあるようですが、もっと根本的に「人への思いやり」の温度が低くなっているような気がしてなりません。知人を通じてご紹介いただいた日野紀子さんは渡米15年。 今回、大学、企業、NPOなどでの講演と「Tokyo de Volunteer」を立ち上げるため来日され、忙しい合間をぬって取材させていただきました。
日野紀子・非営利団体『NY de Volunteer Inc.』代表 日野紀子【Noriko Hino】 
非営利団体『NY de Volunteer.』(NYdVと称す)代表

1967年生まれ。文教大学短期大学部卒業後、OLに。1988年、20才で母の白血病が発覚。2年間の看病もむなしく1990年に母を亡くす。一念発起し93年に渡米。その翌年に父も病で亡くす。NY移住後はTV関係、旅行業、デザイナーなど多種多様な職業をこなす。2002年にNY de Volunteer. を立ち上げる。

 
今日はお会いできて光栄です。意外と背が高くていらっしゃるんですね。NYへ移住されて15年ということですが、まず渡米のきっかけについてお話しいただけますか。
 

背は173センチくらいでしょうか。体が大きいと海外にいても何かと得なんですよ(笑)。皆、大柄ですしね。
もともと叔父が旅行会社を経営していたりで、小学生くらいの頃から家族でハワイ旅行をしたり。70年代はまだアメリカンドリームといわれた頃でしたけれど。海外と接点のある人が周りに多かったんです。日本以外を知っていると、視野が広くなるんだというのを英語を話し、世界を相手にしている大人たちから学びました。
でも、海外留学をしたいと思いながら短大卒業くらいまでずるずると日本にいてしまった。母が白血病になったのが、私が20歳の頃。それからは看病と家事に追われていました。母を亡くして、OL生活をしながら絶対にアメリカへ行きたいと思って、500万くらい貯金したので2年間くらいは働かないでもNYで何とか暮らせるだろうと。それで25歳で渡米。渡米には遅いくらいでしたね。

 
OL生活で500万円貯蓄というのも、すごく堅実な方とお見受けします。当時、結構バブルの名残で派手な遊びが流行っていたと思いますが。2002年にNYdVを立ち上げられたのは、何がきっかけでしたか。
 
渡米10年目にあたった2002年は、当時勤めていた会社が倒産しまして。でも既に渡米後、倒産を経験したのは3つ目。貯金も300万くらいあったので、1年間くらいは好きなことをして暮らせると見込みました。自分へのごほうびになるお金の使い方って何だろう?と考えた時に、私はこの街に住んでいたからこそ、今の自分がある。この街に何かお返しできることをしようと。
 
街へお返ししようと。でも人種のるつぼNYです。新しいことを始めるには並大抵の努力では叶わないのではなかったと思います。どんなことを掲げてスタートをきられましたか?
 
ボランティア活動を推進するため「始めてみよう!ボランティア」をキャッチフレーズに、ボランティアを必要としているNY市と、ボランティア体験希望の日本人を結ぶ架け橋となってきました。「911テロ犠牲者追悼式典ボランティア」「メイクアップボランティア」など計350回以上の活動に携わってまいりました。
 
立ち上げることができても、やはり維持していくのに大変なご苦労がおありかと。スタッフの方をどのようにまとめていらっしゃるのですか。
 
常時20人のボランティアスタッフがいて、大体3〜6ヵ月ごとに新旧交代を繰り返しています。
ボランティアスタッフの仲間とは、基本的に「本人がしたいこと」を尊重して作業を分担して頂いています。各自が納得して、自分がしたいことをしているんだという認識を共有しながら行っております。スタッフになるためには作文を書いて4つの質問に答えてもらいます。「なぜボランティアを推進したい?」「なぜNYdVなの?」「NYdVのどんなところがいい点?」「NYdVのためにあなたができることとは?」といった内容です。こうすることでボランティアを始める段階から、その意義をよく考えてから参加してくださっています。
 
実際、やってみてから見えてくることが多いのでは。一緒に活動するメンバーの姿勢、どのように管理されていますか。
 
ボランティアの成長したい方向と仕事内容をマッチングさせています。お金にはならないかわりに、経験になることは大きな宝です。仕事のボリュームは自分で決められます。いつでも辞める権利はボランティアにある。

参加する人によって、英語を上達したい、アメリカでの仕事経験が乏しい、友達がほしい、など志望動機は色々です。うちの団体は組織としてフラット。でも決して「なかよしクラブ」ではありません。私利私欲のために働いていません。尊敬し合いながら成果を出せることが喜び。仲が良いですが、べったりはしません。NYには一匹狼が多いのですが、うちの団体は日本人とアメリカ人が中心。どんな人がきてもウェルカム、人間関係が基盤です。
 
たくさんのプログラムに取り組まれています。どの活動にも日野さんが関わっていらっしゃるのですか。
 
はい。必ずどのプログラムにも参加しています。私は早くに両親を亡くして、どこかで寂しい思いを抱えて生きてきましたが、その時々で必ずいい人との出会いがありました。人との接点で学ぶことが多い。

ボランティアを通じて、誰かに何かを与えるだけでなく、誰かから何かをもらうことがたくさんある。それに、違う分野の人と交流するのは楽しいですよ。逆に、NYでは自分の指針をもっておかないと生き方がぶれてしまうんですね。それでも、色んな世代、価値観の人と関わっていると、心のバランスを保てるような気がします。
 
起業して新しいことに取り組んでいるのは私もそうですが、資金確保が大変ではないですか?しっかり自分のお給料も得て活動していくには、ちょっとやそっとのことで揺るがないよう腹を括らないとならない(笑)。
 
はい、そうですね。夢で食べていくことはほんとうに簡単ではありません。2ヵ月に一度くらい弱気になります(笑)。
私はこれまでのキャリアで自分で選んだ苦労だけしてきましたが、嫌なことを進んでやってきませんでした。私がこの活動に取り組んでいるのは、けっして経済的余裕があるからやっているわけではないんです(笑)。お金ではない価値がある。例えば 困っている人にありがとうと笑顔をもらうことで、どんなに貧しくても幸せになれます。

NYはもちろん好きですが、実はどの街に住むかはあまり興味がないんです。それよりも、どう生きるか。もし住む街が変わっても、同じようにボランティアをやっていくと思います。日本に戻っても継続的にし続けたい。ボランティアを「特別な活動」から、「日常生活の一部」に変えていきたいですね。 
 
誰もがそういう心で臨めるとボランティアが変わっていきますよね。NYdVのオリジナル企画「子供達へ日本文化紹介放課後企画(略称:EJC)」の活動についてお話しいただけますか。
 
子どもたちを視野の広い世界市民に育てる活動としてNY市から注目を浴び、多文化共生教育の需要が高いとの評価から、今年「NY市公認プログラム」に認定されました。このEJCプログラムは、2007年秋から2008年6月までNY市の6地区で実施する予定です。 この企画の背景には、米国内におけるアジア人人口の増加や、インドおよび中国の急激な経済成長により、米国の国際相互理解の必要性は近年ますます高まっていることがあります。
 
具体的には、これはどういった活動になりますか。
 
週に一度、金曜日の夕方の2時間、6歳から13歳の約40名のアメリカの子ども達に、日本語、日本の遊び(おりがみ、数独、色鬼)、日本食、武道、茶道、音楽など多角的に、8回に分けて日本の暮らしや文化を紹介します。 プログラムの構成は、NYdVスタッフが用意しています。 会場はマンハッタン、クイーンズ、ブロンクス、ブルックリンの4カ所で行われます。いくつかの会場はマンハッタンから30分から一時間ほどかかる場所にあります。ボランティアのみなさんにとっては、遠くて不便だったり、面倒だったりするかもしれません。でもマンハッタンから離れているからこそ、異文化体験の機会が少ない子供達がおり、わざわざ私たちが出向いて行く意義があるのです。遠い会場の場合は、途中駅で集合にして移動しながらボランティア参加者のみなさんが交流を楽しめるようにいたします。

企画の成功には毎週10〜15名のボランティア参加者のみなさまの協力が必要です。アシスタントボランティアとしては必要最低限の英語ができればどなたでもご参加頂けます。日本文化紹介専門家ボランティアとしては、一芸ある方 「剣道が出来て、子供にプレゼンテーション出来る方」「手巻き寿司が作れて、作り方を英語で説明出来る方」「書道が出来る方」「盆踊りを英語で説明し、教えられる方」「浴衣の着付けが出来る方」「期間中のいずれかに日本の歌を歌える、演奏出来る方」などを随時募集しております。

日本で住んでいらっしゃる皆様にもご参加いただけるように、FELISSIMOと提携したツアーをご用意しております。ご興味のある方はぜひ活動をご一緒致しましょう!

日本文化でつながろう!こどもたちに日本文化を教えるNY6日間
<2008.02.05(火)〜2.10(日)>
では、最後に、日野さんのこれからの「夢」について語っていただけますか。
 
究極的な私個人の夢は、『良い人生だった、ありがとう』と言って死ぬことです。 若い頃に両親の死を経験してから、自分はどうやって死ぬのだろうと 自然に考えるようになりました。そしてどう死ぬのか?を考えると日々どうやって生きたいのか?と考えることになります。

『生きている間、一生懸命やれることをやりたい!』 と思っているので、ついつい熱血になるのかもしれません。 NYdVを通して出来ることに、とにかく精進してまいりましたが ボランティアを通じて心豊かな生き方提案をできたらと思っています。

個々が出来ることは小さなことかもしれませんが、 それが集まることによって世の中の流れを変えて行くことができると 私は信じています。 どんなに小さなことでも、関わるということに大きな意味があり、 一人ひとりの行動が結集することで大きな助けとなり、 それが社会に反映していく。 ボランティアは決して一方的に「やってあげる」ものではなく、 互いに与え合う「Give & Give」が成り立つものなのです。

大都会で利害関係なしに人とのつながりを感じることは、人々の心を潤 します。 一人ひとりが周りの人を大切にし合い、自分の夢をもち、 幸せを感じることができれば、世の中はもっと良くなるはずです。 今後も、団体の活動を通じて、微力ながらも、 より良い世の中をつくっていきたいと願ってやみません。

#追伸
NY de Volunteerの姉妹団体としてTokyo de Volunteerがあります。 東京近辺の方で、私たちと一緒にボランティアをしたい方はぜひメーリングリストにご登録ください。 今後の企画のお知らせが届きます。 ボランティアですので、ご自分のスケジュールに合わせて参加したい、興味のある企画に好きな時に、好きなだけご参加ください。 私たちと一緒に、心豊かな時間を共有しましょう!
■Tokyo de Volunteerのメーリングリスト
http://groups.yahoo.co.jp/group/tokyodevolunteer/

ありがとうございました!
なるほど。おもしろそうですね!子ども達はきっと遊びながら、日本のことに関心もってくれることでしょう。実はもっと、とんがったニューヨーカーをイメージしていたのですが、「英語、あんまり話せませんしね(笑)」なんて謙遜されてお話しをされる方で、日野さんとってもホンワカしたキャラクターなのでした。パートナーと暮らすNYのアパートメントは8畳一間!ボランティアの概念に風穴をあける風雲児となってほしい!と願わずにはいられない気風のよさでした。
 

ブルームバーク市長と握手。市長はボランティアが、非常にバラエティーに富んだニューヨーカー同士の相互理解の推進にとても役立つと話されていたとか。NYdVのように、マイノリティーである日本人へのボランティア推進活動には、日本紹介や国際交流的要素も強く、改めてその意義は大きい。

ニューヨークの子ども達が異文化に触れることで、視野を広げ「世界の一員」として育っていく。ダイバーシティ(多様性を教える)教育が注目されるNYの教育界では高いニーズを担っています。

おりがみオーナメント作成 など毎月4〜5回のプログラムを開催。

視覚障害者の方のサポートボランティア@アート展示会。

折り紙オーナメントの他、浴衣で日本の踊り、書道、茶道、日本の子どもの遊び伝承のボランティアなどプログラムは多彩。

視覚障害者の方の来場者の誘導や、ドリンクや軽食のサービス、点字が読めるように点字の位置をゲストに知らせたり、展示アートの説明(作品の横に書いてある作品紹介を視覚障害者の来場者に読んで説明)をしました。

日野さんは上段中央。ボランティアスタッフと一緒に。

ニューヨーク市の社会問題解決・国際相互理解推進の為、在NY邦人から広がる輪を通して、コミュニティサービス活動推進・リーダー育成を行い貢献します。

ボランティア参加者に対して、 Experience(体験)+ Education(学び)+ Exchange(交流)の3要素を含む総合的なプログラムを実施し、コミュニティサービス参加への士気を高め、動員します。

 

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