HOME >> KAKERUインタビュー No.36
【KAKERUインタビュー No.36】
「ふだんの子ども」をテーマに精力的に写真を撮る今村拓馬さん。AERAでお仕事ご一緒したのが最初で、その後、息子の写真を撮らせてほしいと頼まれ、アホな愚息も立派な作品に加えていただきました。ちょっと疎遠になっておりましたが、先日「第3回名取洋之助写真賞・受賞作品展」(2008年1月25日〜31日・東京富士フィルムフォトサロン)のお知らせを頂戴したのをきっかけに、今回登場していただくことになりました。子どもたちの「いま」を見つめ、存在、暮らし、生活を撮った写真。子どもたちが普段生活する場所、子ども部屋などで自然な姿をとらえた作品の数々。なぜ子どもをテーマに選び、撮り続けているのでしょう。そこからなにが見えてくるのでしょうか。興味深くお話をうかがいました。
今村拓馬・写真家 今村拓馬【Takuma Imamura】 
写真家
http://takuma-i.sakura.ne.jp/

1980年生まれ。佐賀県出身、東京都在住。九州産業大学芸術学部写真学科卒業(百瀬俊哉研究室)、九州産業大学大学院芸術研究科写真専攻修了(江成常夫研究室)。(社)日本写真協会会員(PSJ)、赤十字幼児安全法支援員。
現在はフリーランスでエディトリアルを中心に撮影を行う。報道、スポーツ、ポートレイト、イメージカットなど大半のジャンルの撮影に対応。得意ジャンルは子ども。教育関連に特化。モノによっては原稿も執筆。
CoCoAという団体で子どもたちと接するボランティア活動も行う。

 
この度は受賞おめでとうございます。これまでもたくさん受賞歴がおありですが、今回の名取洋之助写真賞で受賞した重みと意義を教えてください。
 

名取洋之助は、ジャーナリストカメラマンの先駆け。編集者でもあり、報道カメラマンでもある方です。この写真賞は30歳以下のドキュメンタリーを撮れる新人という条件で募集されたものです。テーマと内容を800〜1000字添付して、写真は30点を1シリーズとして出品します。
ぼくは、2005年末に新宿コニカサロンで展示した写真の中から枚数を削って、よりよいものを選出して出品しました。

 
30歳以下で、ひとつのテーマで30点出せるカメラマンて少ないのでは?その時代、大先生のアシスタントとかしていたりする人も多いと思うし。
 
そうですね。今回の賞は約50名が応募したそうですが、数としては多くないと思います。呼称でいう、「カメラマン」と「写真家」ってスタンスが違うんですよ。いってみれば、カメラマンは他者発注の写真を撮る人。写真家は自己発注の写真を撮る人。僕は両方やっていますが、自らを名乗る時は、写真家です。
 
なるほどね。以前、KAKERUインタビューでご登場いただいた稲田美織さんも立派な写真家の方ですが、「聖地」というテーマで撮り続けていらっしゃいますよね。写真の勉強はどこでしていたの?カメラを手にしたのはいつから?
 
高校2年の夏に、写真部に入りました。ソフトテニス(軟式)部と両方掛け持ちで。カメラは家にあった一眼レフのマニュアルカメラで。それで、いろいろなコンテストに出して、ほとんど入賞。「表現のステージ」のレベルにあがれる人は少ないんです。大学は写真学科へ進学。大学院にも進んで芸術修士を取りました。100人くらい同級生がいましたが、フリーカメラマンとして今活躍しているのは2人くらいです。家業の写真館を継いだり、サラリーマンしながら趣味で写真をやっていく人のほうが多い。
 
現実は厳しいんですよね。自分の中から湧き上がってくるテーマが、今村さんの場合は「今の子ども」ということで。何がきっかけで、このテーマにしたのでしょう?
 

郊外で子どもがポツンとしているのを見て、青空の下でゲームをしているのに違和感をもった。ぼくらも子ども時代、スーパーファミコンの時代でしたが、外でゲームをやる発想はなかったですから。
コミック漫画を買わなくなったり、年中忙しかったり。サッカーや野球をやろうと思っても、「チーム」に入らないとできなくなっているような。

 
ちょっとルールづくめで窮屈になっているものね。でも、どの時代でもいろんな側面があって、その中で子どもは逞しく生きているんじゃないかなと思うけど。
 
僕は2001年から、子どもをテーマにして撮ってきていて7年くらいずっと観察してきて思うのは、子ども自体は昔とあまり変わっていない。環境が変化しているだけで、子どもの本質的なものは少しも違っていない。子どもの写真で結構今注目されている写真家では梅佳代さんがいますが、子どもの表情ってふざけている一面だけではない。どちらかというと、そういう顔は大人が見てほっとするような顔であって、子どもはふつうの心でいることのほうが多い。
だから、シャッターを押す瞬間は、その子が家の中で、その子らしい表情をしている時をおさえます。いい面もわるい面も含めて、その子の顔が見えるような。一人の人間として存在を認めて撮るんです。
 
今村さんの作品はどれもその子のいい顔、記念写真では到底見られないような顔ですよね。撮っていただいた愚息の表情に、私は脱力しましたけど!両頬にくっ付けた指人形は一体……??ふざけ過ぎ!みたいな。
 
彼らしいと思いますよ(笑)。子どもたちが何でもない時間、評価されない自分に慣れていないというか。いつでも意味を見出すことに追われていたり、順位に一喜一憂したりで、結果の出せないことに、いかに価値を見出せるかが、すごく経験として減ってしまっていると思う。
僕は、仕事以外にボランティア活動をしています。ボーイスカウトみたいに規律がキッチリある野外活動ではないので、参加する子どもたちには瞬間瞬間を楽しい!という思いを蓄積してほしい。そこでしか経験できない価値があると思うので。
 
うちも夏休みは7泊8日ミステリオというキャンプに参加させてもらっていて、今年は大人気なので抽選になってしまうようですが、愚息は毎年行く!と。そこでしか会えない友達や人、親のいないところで何かに夢中になる体験ってすごく宝になると思う。今村さんは、若いのにどっしりして落ち着いているから子どもたちも安心するんじゃない?
 
はい。男の子は瞬間的な身体的コミュニケーションを求めてくるし、女の子は痛くないけれど長いコミュニケーションを求めてきます(笑)。僕は赤ちゃんにも泣かれたことがないし、子どもに好まれる自信はあります。 
 
自分のお子さんを育ててみると、また見え方が変わってくるかもしれませんよ。親へのメッセージはありますか?
 
子どもが何もしない時間を大切にしてほしいですね。今の親は両極端にやり過ぎている気がします。教育熱心な人と、まったく無関心の人が、どちらも増えている。
 
今年は受賞作品展をはじめ、どんなことにチャレンジを?
 
次の展覧会と写真集を出すこと。一人の子を追跡撮影するとおもしろいんです よ。小4だった子を2年後の小6で撮ると、背が伸びているだけじゃなくて声変わりしてたり、ニキビができていたりして成長している。でも男の子の中身は何 も成長していない。そのまんまなんです(笑)。

写真集はどんなふうに何点掲載するか、まだこれからの企画です。モデルになってくれる子どもを随時募集していますので、皆さんお願い致します!ご応募はこちら

■第3回「名取洋之助写真賞」受賞作品展
2008年1月25日(金)〜1月31日(木)
FUJIFILM SQUARE(東京ミッドタウン) 富士フイルムフォトサロン/スペース1》にて

社団法人日本写真家協会が30歳までの「新進写真家の発掘と活動を奨励する」ために、公募した受賞作品を展示します。名取洋之助写真賞は、今村拓馬「Kids-existence-」(カラー30点)、奨励賞は山本剛士「被災者の心 〜新潟中越地震〜」(モノクロ30点)
 
ありがとうございました。
本題とは全然関係ないですが、今村くんは、大御所の絵本作家・故 赤羽末吉さんの描く「桃太郎」(福音館書店)に似ているので、私は密かに「桃ちゃん」と呼んでいます。とても30歳以下には見えない貫禄とお仕事ぶり。きっとさらにすごい活躍をされることでしょう。「その子がその子らしい表情を撮る」。しかし、その瞬間が、ほっぺに指人形の子って……??? さすがによその家の子で、そんなのはいませんでしたよね〜。トホホ(泣)
 

(C)Takuma Imamura.HPより
許諾の上、一部抜粋

ピカチューの指人形を手に寝転がる子

雑然とした部屋の中で何を考えているんだろう?

ベランダから空を見上げてるのかな?

スギオ、ベッドで開脚!指人形を両ホホに吸いつけてます

屋外で遊ぶ子、ちょっとなつかしい

何にもとらわれていない表情

覗き穴から撮ったみたいな感じ?

あどけない表情の双子ちゃん。同じ行動をとるわけじゃないんですね

これだと分かりにくいけど、低い植え込みを境にカクレンボ。この時代を表しています

 

Copyright 2008 Motheru. All Rights Reserved
プライバシーポリシー