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【KAKERUインタビュー No.52】

今回ご紹介するのは、マザールと同じく横浜に拠点を置くクリエーティブな会社「トリクスタ」代表の筒井龍平さん。筒井さんは二年前、東京藝術大学大学院生時代にこの会社を起業したという奇才の持ち主です。大学を卒業後に大学院へ進んだわけでなく、社会人としてITベンチャーでバリバリと仕事をこなしてきた結果、「もう一度勉強がしたくなって」一念発起の後、大学院へ入学……という経歴からも、なかなか熱い生き方を感じます。私生活では、今春復職した妻と二人三脚で2歳の娘を育てる父の面も。オフィスのあるシルクセンタービルから、徒歩でも10分圏内にご自宅があり、毎朝保育園への送り当番は筒井さんだとか。個人的に、こんなカッコいいお父さんがもっとこの街にも増えてほしいです。横浜で頑張るクリエーティブな同志に、これまでとこれからの仕事についてお聞きしました。

筒井龍平【Ryohei Tsutsui】 筒井龍平【Ryohei Tsutsui】

株式会社トリクスタ 
代表取締役/プロデューサー

東京都生まれ。2000年、慶應義塾大学総合政策学部卒。ITベンチャー数社にてメディア・コンテンツ分野の新規事業開発等に従事し、子会社役員等を歴任。経済産業省主催Producer's Workshop第2期メンバーなどを経て、2005年、東京藝術大学大学院 映像研究科の一期生として入学。在学中の2006年12月に、(株)トリクスタを創業。2007年、同大学院を一期生として卒業。現在に至る。
産経デジタル社運営のニュースサイト “iza!” にて、BLOGを連載中
家族は、妻、娘(2歳)。
 
これまでKAKERUインタビューにご登場いただいた方の中でも極めてお若くて優秀で。大学院生でいらして起業されたのも、つい最近のことですよね。大学ではどんな勉強をされていらしたのですか?
 

慶応大学の湘南藤沢キャンパスにある総合政策学部で文系全般とITをミックスさせたような勉強をしていました。大学1年生だった96年頃は、全国でもいち早くネット環境を整えたキャンパスで、常に身近にネットがある生活でした。ネットも含めた広い意味での”コミュニケーション”の領域に興味があったので、就職活動は大手広告代理店を中心にあたっていました。そのうちの1社に内定をいただきました。

すごい。私たちが就活していた頃なんてインターネットも携帯もなかったから、新聞・放送・広告・出版というマスコミ志望者は「マスコミ就職読本」という、今じゃ笑うしかないマジメな就活対策本を頼るしかなかった気が…(笑)。大手の広告会社にすぐ内定をもらって行かなかったのは……?
 

色覚の精密検査の結果、内定を取り消されてしまったんです。日常的な生活にはまったく支障はありませんでしたし、「同じものを見て、異なる認識を持つことを”個性”と言うのではないか」などと抵抗してはみたのですが...。そんなことで断られるなら、大手企業なんてコッチから願い下げだ、と。そこで、同じコミュニケーションの領域で当時ITベンチャーとして伸び盛りでしたサイバーエージェントに入社しました。社員が20人くらいで、皆寝袋を持参して会社に泊まり込んで仕事をしていました。

 
早くから「会社に雇ってもらう」のを辞めて正解でしたね。悔しいことって人を成長させますから。IT企業から社会人スタートされて、ものすごく働いてきたのでは?
 

入社して3ヶ月目くらいに子会社をつくることになってそちらのチームを募集されたので立候補しました。当時は後発組だったEC事業を担当して、1年くらい関わっていました。その後ITベンチャーでいくつか新規事業の立ち上げ等に携わりました。仕事はおもしろかったですし、新しいことに挑戦できるのはとても僕には合っていたのですが、いわゆる”ITバブル”と形容されるような状況が顕著になってきて、身近でマネーゲームに傾倒する人も現れるようになって、5年間IT業界の仕事をしてきましたが、なんとなく一度ビジネスの世界から離れてみようかな……と。

 
それで仕事を辞めて大学院へ進もうと?転職ではなくて、もう一度勉強しようという意欲もすごいよね。
 

もともと勉強することが嫌いではないんです。その頃、実はUCLAのフィルムスクールへ行こうと思っていて、東京芸大大学院のフィルムスクールが横浜に新設される、というニュースを目にして、UCLAに行けなかったら芸大に行こうと…滑り止めみたいな感じで考えていたんです(笑)。で、結局UCLAには縁がなくて、芸大へ入れてもらいました。僕はプロデューサーコースに在籍していました。社会人経験のある方は、僕を含めて3名いました。監督、プロデューサー、撮影・照明、編集、美術、録音、脚本の7つのコースがあって、映画を作ることを優先した実践的作業。講義も、映画理論、ドキュメンタリー、ドラマ性の構築、キャラクターについてなどおもしろかったですよ。

 
2005年から2007年の2年間、フィルムスクールで学ばれて。卒業目前で起業したのは何がきっかけでした?
 

会社に従属しないで活躍できる方法を探ったら、それが起業という形でした。僕は仕組みにのって管理するのが性に合わないんです。何かを立ち上げるまでの過程とか、ものごとが始まるまでのカオスな感じが好き。昔からお祭りが大好きで、思えば中学も高校も文化祭実行委員をやっていました。とにかくワクワクすることを仕事にしていきたいと。既にある会社の既にある仕組に則って仕事をするより、自ら事業を立ち上げていく方がワクワクできるだろうな、という消去法での選択でしたね。
弊社の社名である「trixta(トリクスタ)」は、「trick star(トリックスター)」をひねった造語です。トリックスターは「道化」や「ペテン師」といった意味で、メディア・コンテンツやクリエイティブをプロデュースしていく立場として言い得て妙だと思ったので。目指すは現在のメディア・コンテンツ業界、ひいては文化産業という旧態依然とした世界秩序に敢然と立ち向かわんと。

 
すごく理論的に構築したネーミングですね。マザールという社名も造語ですが、「マザーを社会に混ぜる」「さまざまな価値観を混ぜ合わせる」という意味合いを込めてます。私はお母さんが幸せじゃないと世の中がダメになると思ってます。子どもは親の背中見て育つわけで。筒井さんもお父さんですが、お子さんの存在って仕事頑張る動機としてどうですか?
 

子どもが生まれて、僕はすべて良いふうに回り出した。自由と責任は表裏一体だということが、腹に落ちて分かったんですね。保育園への送りは毎日しますし、妻が月1回エステに行く間は一緒に留守番もします。娘はかわいすぎて誘拐されないか心配です(笑)。

 
もう〜親バカ爆発の時代ですね!ところで現在は、どんなお仕事を主に手掛けられていますか?
 

大きく分けて3つの領域があります。映像と、ITと、そしてそれらがクロスしてくるような領域と。
1つめは、映画の企画製作やCM、企業PV等の映像コンテンツ制作といったものです。今は、神奈川県観光協会さんの仕事を通年でやらせて頂いていたりします。
2つめのIT事業は、これまでの経験を活かしたネット広告の配信システムの設計開発などが挙げられます。EC拡販等の業務をプロジェクト単位で受けることも多いですね。
3つめについては、新しいフィールドになります。例えば最近は、上海にオープンした森ビルの商業ビル内に設置された100台以上のモニターに、ヘッドラインニュースや金融情報、天気予報等の情報データをFlashで制御して動画のように表示する、という映像配信制御システムの開発をパナソニックの子会社と行いました。

 
では最後に、トリクスタという会社を通して成し遂げたいこととは?
 

遠大な話になりますが、今日世界で起こっている種々様々な緊張や矛盾等を解くカギは「
多様性」という概念にあると僕は考えています。企業活動を通じて「多様性こそが可能性である」=「Diversity is the Possibility」という理念を体現していければ、と考えています。

 

ありがとうございました!
高校時代からのお付き合いでご結婚されたご夫婦に遭遇すること、最近では3組目。あの頃に人生のパートナーに出会えちゃったのは、それだけ大人で、早熟だったのかもしれません。IT企業から大学院へ行ったり、起業してバリバリ活躍している一面も素敵ですが、何といっても高校時代からの長いお付き合いの奥さんの存在と、かわいいお嬢さんのことを溺愛している感じ。そんな当たり前な一面も、とっても好感をもちました。公私ともに充実の時、これからも応援しています!

 

社名のtrixstaのロゴマーク。語源の由来は、trick star!

藝大大学院の卒業制作「心」のワンシーン。卒業一期生ということで、マスコミの注目度も高かった。

トリクスタのある横浜・シルクセンタービルから見える港。取材中、ボォ〜っと汽笛も聞こえて風情たっぷり。

シルクセンターに隣接する横浜開港資料館。来年は150周年記念ということで、賑わいが予想されます。

(左)新訳:今昔物語
「世にも奇妙な物語」に通じるヒンヤリした物語のオムニバス。
「ほぼ日刊イトイ新聞」で取り上げられました。 朝日新聞でも筒井さん、取材されていました。

(右)東京藝術大学大学院卒業制作フィルム作品。
筒井さんが制作された「心」は、 脚本だけでなく、映像や音楽も素晴らしい。 キャスティングも、びっくりするほど豪華です!
藝大大学院については、こちらをご覧ください。

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